目指していた「一人ひとりと向き合う看護」

今、訪問看護ステーションで働くTさん。
1分前のこともすぐ忘れてしまう認知症の利用者さんが、私が行くと喜んでくれる、覚えていてくれる。それがとても嬉しいんです」

「時間に追われる看護」に抵抗を感じて、8度も転職を繰り返した末に手にした喜びが、この訪問看護という仕事。

Tさんの場合、「一人ひとりの患者さんととしっかり向き合う看護を目指してきました。しかし病院はおおくの患者を抱えていて困難。ナースコールがなれば次々と対応していかなければならないという現実に、自分は納得ができなかった。ゆっくりと患者とかかわれるかもという希望を抱き特別養護老人ホームに転職したが、やはり患者数が少ないなため。慌ただしさに変わりはありませんでした。」

ただ、その特別養護老人ホームで気がついたことがあるとおっしゃっています。
「病院の患者さんは、通院や入院という一定期間の関わり。でも老人ホームは、相手の方と長く関われるんです。病院は、病気を治すことが目的。血圧測定、処置など看護師として的確に仕事をこなせばしれでいいように思えました。でも老人ホームって、私の表情や言動によっても周囲に与える影響が変わるんですね。生活の場に深く入っていくことで、”人間としてのかかわり”の重要性を強く感じました。結局は辞めてしまったのですが、自分のやりたいことが、ぼんやりと見えてきたんです。」

そして30代直前にワーキングホリデーで北米へ、老人ホームでボランティアを経験。

そこで見たものは、「日本の場合、手芸教室やダンスパーティなどのイベントは、プログラムの一環として参加する印象があったのですが、ここでは、参加するもしないも本人の自由。入居者が自分で選択し、主体的に生活を送っているということに感銘を受けたんです。スタッフは、ケアというよりサポート。そして思ったのが、その人らしく生きていくためのサポート、それが自分が追い求めていた仕事ではないかと・・・」
そして帰国後、訪問看護に携わることに。

「訪問看護は、病院のようにほかの患者さんから呼ばれたり、医師や看護師から急に仕事を依頼されたりすることはありません。誰にも邪魔されることなく、しっかり向き合える時間をもてるんです。」

「この訪問看護の仕事って、利用者さんの日常に入っていくような感じです。特別なケアではなく、その人らしい毎日を過ごせるようなサポートをする。その人が困難なことを手助けする。そして、私自身、利用者さんから元気をもらっています。看護師としてだけでなく、こうやって人と関われる仕事をずっと求めてました。ようやくたどり着けました。」