立ち止まって振り返ることも重要

Iさんは、現在、診療所付属の訪問看護ステーションに勤務。
11年間、看護師を続けてきたが、「総合病院に勤務していたころは、毎日の業務に加え研修、勉強会には全て参加。研究を発表したり、ボランティアにも積極的に参加するなど、精力的に取り組んでいました。でもふと、このままの状態でいいのかと思ったんです。」

そして看護師の仕事を辞め、最初の一ヶ月は旅行をするなど気ままに過ごしてきたが、3ヶ月たったある日、体調を崩してしまい、病院へ。そしてそこで「膵臓がんの疑いがある」言われ、絶望の淵へ。

初めて患者として過ごした毎日は、Iさんにとってとても意味があったようです。
「それまでは、ケアを行う中で患者さんの気持ちを自分なりに理解していたつもりでしたが、十分に理解していなかったと思います。患者さんに思いを聞くことが多かったのですが、そんな深い話まで、私が聞いていいのかという思いがあったのですが、死を目前にしているからこそ、その気持ちをわかってもらえる人に自分の気持ちを聞いてもらいたくなるんですよね。その気持ちがわかったんです。以前よりも患者さんの気持ちがわかるようになり、やっぱり自分には看護師しかないと思ったんです。」

そして、幸いにも検査で異常がないことがわかり、派遣看護師として訪問看護のデイケアや入浴補助の仕事に携わることに。

「今考えると、あの時に立ち止まって自分を振り返ることができて、本当に良かった」とIさんはおっしゃっています。
「自分を振り返ることで、これまでに出会ってきた患者さんを始め、様々な人の気持ちにも思いをはせることができるようになりました。そして、自分には看護師の仕事しかないって思えたんです。」

「しがみつくことだけが、頑張ることじゃない。引っかるものがあったら、立ち止まったらいいんだと思います。距離を置くことで、初めて気づくこともあるように思います。」